【3rdシーズン総括】弦巻スカイスターズ編

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 最後の打者、奥沢美咲が見逃し三振に倒れ、スカイスターズの3rdシーズンはあっけなく幕を閉じました。
 3年目のシーズンにして、初めてペナント制覇を逃し、2位からの下剋上を狙った弦巻スカイスターズ。しかし結果はCSファイナルステージ3連敗という、情けない幕切れとなりました。思えばこのシリーズの戦いぶりも、シーズンの課題が凝縮されたものとなっていたように思います。

打撃編

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打点が少なすぎィ! これシーズン終了後ですよ??

 今季のスカイスターズの問題点は、得点力不足。これに尽きます。チーム打率こそリーグトップの成績だったものの、肝心の得点はパリーグも合わせて16球団で最下位という燦々たる成績で、これで日本一を目指そうとしていたこと自体無理があったのでしょう。塁上を賑わすもののあと一本が出ない展開。それ以前にそもそもランナーすらほとんど出ないような状態。どちらの試合も嫌というほど見ることになったシーズンでしたね。
 ではペナント制覇を逃した要因はシンプルに「貧打のため」となるかというと、単純にそういう理由ではありません。今シーズンの戦いぶりをデータで振り返ってみると、少し別の要因が見えてきます。

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後半戦はサッカーをやってたのかな?

 まずはチームの得失点について、前半戦・後半戦別にデータを見てみると、前半戦のスカイスターズは1試合当たり3.69点と、それなりのペースで得点ができていたことがわかります*1。しかし後半戦は数字がかなり落ち、なんとわずか2.50点と、平均して1点以上得点力が下がってしまっていることが分かります。この原因として挙げられるのが、サブメンバーたちの相次いだ故障・スランプです。後半戦開始早々、あこ・マスキングがスランプになり、奥沢も肉離れによる全治一か月を含む二度の離脱となるなど、打力に期待するポジションのメンバーが揃って不在となる時期*2が長く続いてしまいました。元々スタメンの打力、特に下位打線の打力が優れておらず代打に頼ることも多いチームだけに、この影響は大きかったです。
 また、トラブル対象が奥沢・あこという外野手に集中したことも痛手でした。チーム構成として外野手の層が薄いという事情があるため、総合的な能力を考えるとセンター・弦巻、ライト・若宮はほぼ固定せざるを得なくなってしまい、結果この両名は終盤疲労で全く調子が上がらず、右肩下がりに成績を落とすことになってしまいました。疲労の溜まりやすい二遊間の北沢・日菜は適宜バックアップ要員と交代することでなんとかケアしていたものの、外野手についてはそれすら叶わなかったのが実情です。こう考えると、単に「野手の戦力不足で貧打だった」というよりも、「野手の層の薄さが得点力不足に繋がった」と見るのが正しいでしょう。

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外野手が二遊間と同じくらい疲労してるのは異常事態です。

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今シーズン打者全成績。友希那さんは先発投手代表として入れてます。

 スカイスターズ打線はあと一本が出ない、というイメージが強かったかと思われますが、実はチームの得点圏打率については.290ほどと、むしろ高水準な数字です。ではこの矛盾はどこから来るのか? というと、実は全く矛盾しておらず、ランナー二塁からワンヒットで走者が帰ってこれない、というケースが頻発していたのが実情です。この原因の一つは打者のパワー不足で、外野手の間まで飛ぶような深い打球、つまり「打者走者は一塁止まりになるけど二塁ランナーは帰ってこれる」という、ランナーを返せるシングルヒットが少なかったことが要因です。もう一つは単純にランナーの走力不足。今季、上位の弦巻・北沢以外に俊足と呼べる走力B以上がスタメンに並ぶことはほとんどありませんでした。かといってそもそも下位打線にはパワーもないので、こうしてみると野手の戦力不足だったということも否めないですね……。

投手編

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野手と対照的にすこぶる優秀です。白星の少なさを除けば……

 続いては投手陣。悲惨だった野手陣と比べ、投手陣は下馬評どおりの素晴らしい働きを見せました。16球団最下位の得点とは正反対に防御率はトップで、16球団で唯一400失点を切りました

 投手陣を引っ張ったのは間違いなくRASから新規加入のレイヤで、今シーズンいきなり12勝を挙げる大活躍を見せました。単に白星が多いだけではなく、6完投で4完封とタフネスぶりもいかんなく発揮*3。元々の高スペックはもちろん、ノリノリになったこと、またそれがバグでは? と思うほど長期に渡ったことが好成績に繋がりましたね。今季は2番手扱いも3年連続防御率1点台の湊友希那、リリーフもこなしながら同じく1点台を記録&自身初の二桁勝利を記録した戸山香澄、と表ローテには1点台が3人並ぶというあり得ない贅沢な布陣でした。この3人が60試合ほど先発登板し、ついた白星は半分のわずか31……というのがチーム事情を物語ってしまっています。悪いほうで目を引いてしまったのは13敗とぶっちぎりでチームワーストの丸山彩ですが、丸山も実はQS率自体は決して悪くなく、これまた援護の無さに泣いたということになります。先発については間違いなく16球団で最も恵まれていたチームなのです。

 一方でリリーフ陣は序盤戦、なかなか整備できず苦しみました。まず守護神候補として挙げられていたチュチュが被弾を繰り返しあっさりと降格、オープン戦で結果が残せずも昨季の実績で代役となった市ヶ谷有咲も同じく沈むなど、早々に抑え問題が顕著となってしまいます。この事態は本来セットアッパーであった氷川監督を守護神とすることで乗り切ったものの、今度は7・8回が不安定になる結果に。つまるところ、信頼できるリリーフが1枚足りなかったということでしょう。

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一見平均的な数字に見えますが……?

 今季のイニング別の失点数で言うと、数字として悪いのは7回・8回ということになります。野球というスポーツの特性として、打順が必ず先頭から回る1回、同じく2回り目の頭からになりやすい4回の失点が多いのはある程度仕方がありません。しかし、本来強力なリリーフが投げるべき7回・8回の失点が中盤5回・6回のほぼ倍近くあるのは継投で苦労していたという事実に他ならないです。こうして総合してみると、先発投手陣は類まれな出来でゲームを作り続けたものの、打線がまともな得点を挙げられず、リリーフが失点して負けるパターンが多かったということが伺えますね。つまりスカイスターズは単なる「ムエンゴ」にとどまらず、敢えて同じようなスラングを使うと「ヌッス」*4にも悩まされていたということです。

 投手陣の防御率の良さを語る上では、このチームの守備の良さを無視することはできません。外野手ではセンター・弦巻、ライト・若宮イヴが毎試合のようにすばらしいプレーを連発し、チームを何度も救ってくれました。両名ともリーグでも屈指の守備範囲を誇るだけでなく、幾度も捕殺を記録し送球の面でも高い水準を見せてくれました。特にライトの若宮イヴは、強肩によりランナーに進塁を自重させる、抑止力的な役割で目に見えない失点の芽をついばんでいたことも間違いありません。一塁・瀬田、二塁・北沢もかなり高水準の一二塁間で、このチームがやや緩かったのは三遊間くらい。それでも遊撃・日菜は中の中程度は守れていたし、三塁・巴も肩の強さはあり俊足の打者走者を刺すシーンもあるなど、決して悪くはありませんでした。さらにこの二人をバックアップする守備の名手がベンチにはたくさん控えており、守り勝つ野球で1シーズンを戦い抜いたことは間違っていなかったと言えるでしょう。

シーズン総括

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終盤戦、よく追い上げを見せたのですが……

 最後に、貯金推移グラフと見る今シーズン通じての戦いぶりについてです。昨年2ndシーズン時点から打線には難のあったスカイスターズ。しかし上位打線はリーグでも屈指という武器はあり、最低限必要な得点は挙げられていたことがペナント制覇に繋がりました。今季3rdシーズンはそこに新たにRAS・Morfonicaの10名が加わり、単純に戦力は増えたはずだったのです。しかし蓋を開けてみると、開幕直後から切り込み隊長と期待していた弦巻こころの大スランプが大きく影響し、開幕6連敗と最低のスタートを切ってしまいます。4月の半ばには後を追うように日菜がスランプ、4番・瀬田がケガで離脱、唯一残ったはぐみも疲労で調子が振るわなかったりと、上位打線に目を覆いたくなるようなアクシデントが続きます。開幕してわずかだというのにスタメンすらまともに組めないような惨状。交流戦前のグリフィンズ戦なんかが顕著な例でしたね。しかしこのオーダーでも白星を掴めるのがスカイスターズ投手陣の素晴らしいところ。このゲームなんと2-1でモノにしてしまいます*5。今思うと、今季はこうやって戦うしかないんだぞ、という野球の神様からのメッセージだったのかもしれません。

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なにこれ?

 しかしいくら投手がよくても0点では勝てないのが野球です。スカイスターズは前半戦だけで10度の完封負けを喫してしまうなど打線の弱さは否めず、結果大型連勝のようなブーストはかけられない戦いが続きます。交流戦もなんとか貯金2で乗り切ったものの、首位・四国とは10ゲーム近く離されてしまう始末。この時点で今シーズンのペナントは危ういよな、と私だけでなく視聴者のみなさまも思っていたことでしょう。それでもスカイスターズは、先発投手の強力さを頼りにロースコアなゲームを丁寧に拾い続け、大型連勝はなくともカード勝ち越しを繰り返すことで、地道に貯金を積み重ね始めます。前半戦終了時点で首位・四国との差は「4.5」に。なんとか背中が見えてきます。

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8.5ゲームってそうそうひっくり返る差じゃないんですよ……。

 後半戦はその頑張りを台無しにする、33イニング連続無得点を含む44イニング連続タイムリー無しを記録し5連敗するなどどうしようもない貧打に苦しみますが、四国サイドがスタメンの疲労から少しずつ主力を休ませ始めたことで、かすかなチャンスが生まれます。四国が手綱を緩めて貯金をキープする戦いを見せる中、スカイスターズは前半戦と同様地道に貯金を積み重ねる戦法で、9/11に今季最小のゲーム差、1.0で最後の直接対決を迎えます。しかし、チームの力が残っているのはここまででした。そこまで全力で走ってきたスカイスターズに余力はなく、結局は最後の直接対決を落としてしまったことで四国のM消化が確定的となってしまいます。最終的には6ゲーム差をつけられ2位という結果に終わりました。今季はついに、一度も首位の座に立つことがありませんでしたね……。

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この間の3点、すべて薫くんのアーチです……。

 実は後半戦50試合のうち、チームはなんと約3分の2にあたる33試合で2得点以下という衝撃的な得点力の無さを露呈してしまいました。クライマックスシリーズも、ファーストステージのグリフィンズ戦まではなんとか打線が得点していたものの、ファイナルステージは初戦が3点、2戦目1点、最後の試合となった3試合目はついに0点と、完全に力尽きる格好となりました。2戦目3戦目と、投手陣は2失点で相手打線を抑え込んでいるのです。これで当たり前のように連敗するというのがあり得ないんです。本記事の冒頭で述べた、今シーズンを象徴する戦いとは言うまでもなく「投手陣の頑張りに打線が応えられない試合」です。ここまで酷い得点力で短期決戦を勝ちぬくのは、どんなに投手陣が良くても不可能であるという好例だったのでしょう。対照的に四国は1戦目に23安打11得点を記録し、シーズン終盤に主力を温存した効果が十分発揮されていました。この結果からしても、最後の最後まで野手陣の弱さ、層の薄さが出てしまったのかなと思います。

来シーズンの見通しについて

 来季は氷川監督が3年間の任期を終え、チュチュ様こと珠手新監督が手腕を振るいます。チュチュ様の方針は「打力優先」、つまりは正捕手を大和麻弥からマスキングこと佐藤ますきに切り替えることから始まるようです。メタな表現になってしまいますが、リード力がキャッチャーAからEに下がることで投手成績は悪化し、打力については一人分向上することで上向くことは間違いないでしょう。これがシーズン全体として、どのような結果につながるのかはまだ私にも全くわかりません。そもそも、私のペナントレースではオリジナルチームを毎年募集しているので、普通のペナントレース以上に対戦相手が毎シーズン大きく変わってしまう、という最大の要因があるんですけどね。果たしてチュチュ様の手腕でチームは再び優勝できるのか、それとも再び守りのチームに戻るようなことがあるのか……? 私自身もとても楽しみです。

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正捕手交代がどのような結果につながるのか?

*1:このペースだとシーズン527点

*2:厳密にはスランプって不在ではないんだけど、CPUに操作をおまかせの観戦プレイでは選手の調子でCPUレベルも変わるという仕様があり、スランプによる能力低下とのダブルパンチで相当きびしいです……。

*3:ちなみにムエンゴで2完封を失っています……。

*4:リリーフが同点または逆転されてしまい、その後チームが勝って白星がリリーフにつくこと、です。白星を「盗む」から「ヌッス」に。

*5:やまとまやさんが2シーズンぶりの決勝ソロを放った試合です。